―――執着―――
あたしとの距離、30cmくらいの所で止まり、杉崎はあたしの顔を覗き込んだ。
どっちかが前屈みに倒れそうになった時点でキスしてしまいそうな距離だ。
あたしは近づかれた意味が分からず、あたしよりちょっと背の高い杉崎を見上げる。
「な、何………?」
戸惑いを隠せない。
一歩後ろに後退するが、一歩後退する度、杉崎はあたしとの距離を詰めてくる。
…………一体、何なのだ。
そんな杉崎の行動に眉間に皺を寄せていると、杉崎はあたしにニッコリと笑った。
「???」
さっきの笑いとは違う、優しい笑み。
意味が分からない。
今まで意味の分からない、ミステリアスな言葉を吐いていた杉崎とは思えない笑みで、あたしはまた思わず後退する。
何か不気味だったので逃げたかったのだ。