君と、恋
分かんないけど。
十夜の様子がおかしい。
別れるなんていきなり言うし。
部屋に来いとか、
すっごい無理矢理だったし。
さっきだって。
力強く握ってたけど、
どこか優しくていつもの十夜だった。
でも。でも、十夜は…。
あたしのこと。
"この世で一番嫌いだから"
そう言った。
いつもいつも、あたしのこと
めんどくさいとか。
うるさいとか。
たくさん憎まれ口は聞いたけど。
嫌い、だなんて。
あたし初めて聞いた。
あたしのことを嫌いだなんて。
聞いたことないよ。
「さつき!はいっていい?」
コンコンとドアを叩く小さな男の子。
「壱、おいで?」
「さつきー!」
きゃっきゃ、とはしゃぐ壱。
壱は弟のように可愛がっている。
すごく懐いてくれてるし、
あたしのことを好いてくれてる。
「ねえねえ、さつき」
「んー?どうしたの?」
「おにいちゃんのことなんだけどね」
ベッドで隣に座る壱が、
あたしの服の裾を掴む。
「さいきんね、すごくおこるの。なんかあったのかな?」
「怒るの?いつも怒ってるよ、あいつ」
わずか10歳の男の子が、
自分の兄を心配する。
10歳の子でも、人の変化が
分かっちゃうんだ。
ね、十夜?
どうしちゃったの?