君と、恋
「…ん、紗月か。どした?」
どきっと肩を震わせる。
いきなり声が聞こえて、
自分の気持ちに気付かれるんじゃ
ないかって。
「あ、えと…、飛鳥ちゃんに頼まれて。これ…」
寝起きの十夜に、
紙袋とビニール袋を渡す。
十夜は自分の顔に手を当てて、
辛そうに顔を歪ませた。
「どっか置いとけ」
あたしは、地面に置くと
勢い良く立ち上がった。
「じゃ、あたし…帰るから」
おかしい。
あたしおかしいよ。
「紗月」
「ん?」
「何で泣くんだ」
何故か涙が、
勝手に流れ落ちる。
「泣いて、ない」
必死に拭う涙を。
いつの間にか十夜に
見破られていた。
「紗月」