君と、恋
ブブブ…、と。
携帯のバイブ音が聞こえる。
「…携帯…、携帯」
手探りで自分の鞄を捜す。
だけど思い通りに動かない。
腕が…、重い。
「…ん、…あ、そか」
ここ、十夜の部屋だっけ。
あたし寝ちゃったんだ。
「やばい…、携帯!」
寝ている十夜の腕を退けて、
鞄の中から携帯を取り出す。
「っはい、もしもし」
『紗月?大丈夫?』
「あ、うん。平気平気!」
電話越しの哲に。
今のドキドキが伝わってないか。
隠すので必死だ。
『もう出てこれる?』
「あ、うん。大丈夫。じゃ、今から行くね」
『もう家の前に来てんだ。ゆっくりでいいから』
家の…前とか。
ダメじゃん。
「はーい。今行きま~す」
電話が切れた機械音を聞きながら。
状況を整理する。
あたしは今から哲と会う。
だけどあたしがいるのは、
自分の部屋じゃなくて。
…十夜の、家。
「めんどくさく…なりそ、」
仕方なくあたしは、
起き上がって布団から出ようと
足を出す。
「十夜…、あたし行くからね」
「…今、何時?」
「んと、7時過ぎ。…やっば、寝すぎた!」