君と、恋
「ごめん、哲…」
「…紗月?」
ゆっくり息を吐く。
馬鹿なあたしを…。
「あたし、帰んないと」
許して。
「え…帰る?」
「あ、んとね。お母さんが用事あるから帰れって」
嘘をつくしかなかった。
「あ、そっか。仕方ないね」
「本当にごめんね。また…今度行こう?」
「全然俺のことは気にしないで。送って行こうか?」
最後の最後まで。
「ううん、大丈夫!走って帰るから!」
最低なあたしを、許して。
「気をつけてな?近くだけど、夜だからね」
「うん!ありがとね!」
あたしは、手を振って
哲の元を去った。
不思議なことに、
罪悪感はなくて。
だけど、迷いはあった。
今から行って、
あたしは何をしたら
いいのか。
自分でも分からないくせに。
あたしはそれでも、
十夜の元に行きたかった。