君と、恋
Eighth episode
















あれから3日が経った。


学校の教室に1人座って人を待つ。


校庭からは帰ろうとする生徒の


声がたくさん聞こえる中。


あたしのいるこの場所は、


シンと静まっていてやけに


居心地が悪かった。




















「遅いな…」






















待っている人。


あたしの彼氏である哲。


昨日連絡が来て、


今日放課後教室で待っていて


ほしいとのこと。






















「…あ」























その時、電話が震えて


ディスプレイを見る。


そこには哲の名前があった。























「もしもし…」




















『紗月、今教室?』
















「そうだよ?」

















優しい声が電話越しに響く。


哲の声が、耳から離れない。





















『教室来てくれる?待ってるから』



















「あ、分かった。今…行くね」

















終了ボタンを押す。


何だか、この感じ。


1番始めの電話みたい。


目の前には十夜がいて。


哲から電話があって。


そして。























「もう…着いちゃった」























あの時は、


この教室までたどり着くのに


遠くて遠くて仕方なかったのに。


不思議と今日の足取りは、


すごくすごく軽かった。


























「…哲?」

















「紗月、こっち来て」






















教卓のある入口から入ると、


1番後ろの端っこに彼は座っていた。


夕日が差し込むその場所は、


陽の力というよりも、


彼の存在自体が暖かく感じてしまう。









< 128 / 152 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop