君と、恋
彼はいつも。
あたしにいつも。
陽を浴びせてくれていた。
「どうしたの?昨日あたしの教室って…」
「何かね。1番始めの付き合いたての頃みたいだなって」
ねえ、哲?
あたしもさっきね。
同じこと考えてたんだよ。
懐かしいな、って。
思ってた所だったんだよ。
「あの頃のこと考えると…懐かしいね」
あたしは哲の前の席に座ると、
授業中に後ろを向くように
体を後ろに向けて座り直した。
「で。話って何?」
「あ、そうそう。これね」
哲が鞄から取り出したもの。
長方形の形をした、
青いチケット。
「これ…って、」
「紗月がこの間行きたいって言ってた水族館のチケット。やっと手に入ったから、どうかなと思って」
哲はこういう男だから。
あたしが行きたいって。
やりたいんだって言ったら。
どれだけ時間を使ってでも、
成し遂げてくれる、そんな男。
この水族館は簡単には手に入らない、
有名な地の水族館。
「今度の休み…行かない?」
笑顔であたしに差し出すチケット。
いつもの優しい、哲の笑顔。