君と、恋
だけどあたしね。
「ごめん…、哲。あたし行けない…」
「それじゃあ、来週は?」
「違うの。もう…一緒に行きたくないの」
哲は。
表情を変えないまま、
手だけを引っ込めた。
少し肩の力を抜いて、
小さく息を吐く。
「紗月、どうしたの?」
「もう哲と一緒に居たくないの。一緒にいると辛いの。楽しくないの。だからもうおしまいなの」
こんな方法。
正しいなんて思わない。
傷つける方法なんて、
間違ってると思う。
だけど、笑って優しくさよならなんて。
そんなのあたしがしていい方法じゃない。
憎まれても仕方ない。
恨まれても仕方ない。
だけど、哲は優しい人だから。
もしあたしが普通に別れを切りだしたら。
彼はきっと、優しくさよならを
しようとするから。
「紗月…」
「もう声も聞きたくない。ずっと好きじゃなかった。あたし…もう終わりにしたい」
寂しそうに見つめる哲を。
あたしは見ることが出来ない。
「さよなら。もう…連絡して来ないで、」
あたしはそう言って、
教室を後にしようとドアに向かう。