君と、恋
「俺が紗月を好きになったのは、仲良くなる少し前。桜の咲いている頃だったかな。木の下で藤田と待ち合わせしている紗月を見たんだ」
懐かしむように話す哲。
儚い声色が、あたしの涙を
増させてしまう。
「桜が似合ってて。すごく綺麗で。俺の一目惚れだったんだ」
いつもどんな時でも。
あたしを見守ってくれた。
大切にしてくれてた。
「仲良くなれた時はすごく嬉しくて。絶対俺の物にしようって。…だけど、紗月が藤田を好きな事は知ってたから」
「…え、」
「藤田を見る目が違ったからな。すぐ気付いたよ。好きなんだな、って」
それでも哲はあたしを好きで
いてくれて。
あたしを1番に大事にしてくれた。
「付き合ってくれた時は絶対守ろうって。大切にしようって」
「いつも哲は大切にしてくれたよ。あたし…幸せだった」
本当に幸せだった。
哲に出会えて。
好きになれて。
本当に幸せだった。
「1つだけ、紗月に言わなきゃならないことがある」
「…言わなきゃ、いけないこと?」
「この間、村中の別荘の海に行った時。藤田がいなくなった事…覚えてる?」
飛鳥ちゃんを残して。
十夜が1人で何処かへ行ったやつ。
「あれね。紗月を探しに行ってたんだって」
「…あたし?」
何で…あたしを?
「とにかく。俺は紗月が好きだったよ」
「うん…、うん」
耳元で囁く哲。
あたしは…、罪悪感で
いっぱいになった。