君と、恋
「俺の方が幸せだったよ。紗月と居れて、すごく幸せだった」
哲はふっと笑って息を吐くと、
あたしの背中をポンと押した。
「もう…行けよ」
「哲…、っ待っ、て」
まだあたし。
哲に言わなきゃならないこと
たくさん、たくさんある。
ありがとうも。
大好きだったも。
まだまだ伝えきれてない。
「絶対!…後ろ向くなよ?」
「嫌だよ。まだ…話あるの、」
「今後ろ向いたら…、」
唾をのむ。
重たい空気の中。
あたしは哲の言葉をただひたすら
待つことしか出来ない。
「俺お前を…また好きになるから」
溢れる物は止められない。
何もしてないのに。
涙が流れる。
「諦めようとしてる俺の覚悟が…意味ないから」
温かい手が。
あたしから離れて行く。
「っ…嫌ぁ」
「なら俺にしろよ。藤田なんかじゃなくて。絶対幸せにするから」
そして哲は。
あたしをもう1度後ろから
抱きしめた。