君と、恋
「紗月ー?何してるの?」
家に着いて、自分の部屋にこもる。
下からお母さんの声が聞こえるも、
聞こえないふりをする。
布団に入って、耳を塞ぐ。
ここまでしてあたしは、
十夜を想う必要があるのか。
愛してくれる人を捨てて、
愛した人を追いかける必要が
あるのだろうか。
「それじゃ、後頼むわね。あの子、寝てるみたいだから下りて来なくて…」
「あ、いいよ。別に用ねえし」
じゃあね。と言うお母さんの声と。
はいよ。と言う男の声。
…男?
「おい、タヌキ」
「…は?」
階段の上がる音と。
聞き覚えのある声。
「タヌキ、寝てんのか」
「だ、誰がタヌキよ!」
「やっぱり。タヌキ寝入りだろーが」
あ、そゆこと。
なんて納得しながら。
びっくりして飛び起きる。
どうしてここに、
十夜がいるの?
「てか…、何して、ん」
「親が飯食いに行くって。だから仕方なくこっち来た」
てん。てん。てん。
この間の雰囲気じゃない。
どこか、変わった?
「何か作れよ」
「嫌よ…っ、寝る、」
涙の跡を必死に消す。
十夜は絶対。
あたしの様子を伺うから。