君と、恋
誰もいないこの家で。
あたしは十夜に抱かれる。
2人の間に何の関係もないのに。
あたしは十夜を求めてしまった。
慰めなんかじゃない。
あたしが十夜を欲しがった。
「紗月」
「んっ…ぁ」
軋むベッドの音がやけに響く。
生々しい音を残して。
十夜はあたしの名前を愛しそうに
優しく呼ぶ。
「十夜ぁ…十夜、」
それと同時にあたしも
十夜の名前を呼ぶ。
繋がりが出来た気がした。
名前を呼ばれる度に名前を
呼びたくなる。
動く度に、漏れる声が
一層大きくなる。
見つめられる度に、
十夜を愛していく。
「愛してる…」
思わず出た感情に。
嘘を付け足した。
「哲…愛して、る」
哲の名前を出して。
あたしは涙が溢れた。
素直に好きだと、言いたい。
十夜に愛してるって、
そう伝えたいよ。
「…ふ、ぁ…っ」
こんなに虚しいなら。
十夜愛すんじゃ…なかったよ。