君と、恋
「…ん」
真っ暗な視界から光が流れる。
眩しくて目を細めると、
そこには十夜の顔があった。
「気、ついたか。お前寝たから」
「…ほんと?そっか、寝て…っ」
起き上がって布団に手をかける。
いつもと違う感触を辿っていくと、
素肌に布団が当たっているということ。
「重たいから動かせなかった」
小さな嫌味を聞き入れながら。
さっきのことを思い出す。
「…十夜、あの…っ」
「俺風呂入ってくるわ。また戻ってくる」
あたしの言葉を最後まで
聞かないで出ていく十夜。
あたしは止める言葉が見つからず、
背中を見送ることしか出来なかった。
「…あたし、最低だ」
その後。
お風呂に入った十夜は、
言った通り戻って来たけど。
何を話すこともなく、
座って雑誌を読んでいた。
今更何も言えず、
あたしもベッドの上で
雑誌を読んでいた。
だけどやっぱり。
何も言わずでも居られる
この雰囲気が
たまらなく好きだった。