君と、恋
あの日から。
何も変わらないあたしと十夜。
未だ結衣には話せない。
無理だよ。
こんなこと知られたら、
きっと軽蔑されちゃう。
「紗月ー!」
「あ、来た来た」
授業が終わって、結衣を待つ。
少し友達に用事があるという
結衣をしばらく1人で待つことに。
「遅くなった!ごめん、帰ろうか」
頭を下げる結衣に、
あたしは笑顔を見せる。
その時。
「紗月さん…、結衣さん…」
後ろから声がして。
振り向くとそこには、
飛鳥ちゃんが立っていた。
「飛鳥ちゃん!どうしたの?」
複雑な気持ちのあたしとは違う、
心配するような態度を見せる結衣。
目の前の彼女は、
今にも泣きだしそうな
表情をしていた。
「すいませ…、ちょっと相談…いいです、か…?」
突然泣き出した飛鳥ちゃんに
駆け寄って、あたしと結衣は
両方の肩を擦った。
泣き止まない飛鳥ちゃんを連れて、
誰もいない教室に入る。
座らせると、
飛鳥ちゃんは結衣ではなく
あたしの目をじっと見つめてくる。
「…ど、したの」
思わずどもってしまう。
あたしのしたことが、
バレたんじゃないかって。
「あたし…もう、十夜くんが…分かんないんです」
そんなこと。
あたしに言わなくても。
なんて思う、
最低な自分がいた。