君と、恋
Ninth episode
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「あの」
学校に来る途中。
誰かに声をかけられ、振り向くと。
「すいません。少しお尋ねしたいことが」
真っ黒なスーツに身を染めた、
長身の男の人があたしに訪ねて来た。
「何でしょうか?」
「ここに書かれた高校の生徒さん?」
「そうですけど」
知らない人相手だからか。
ただ単に面倒だっただけか。
知らないうちに素っ気なくなる対応。
「道が分からないんです。教えていただいてもよろしいですか?」
「あ、いいですよ。じゃあ…行きますね」
別に隣を並んで歩く必要もない。
話す必要もない。
だからあたしは、
学校への道をひたすら
無言で歩き続けた。
「この先真っ直ぐです。では、あたしはこれで」
ぺこっと頭を下げてその場を去る。
ありがとう、と爽やかに告げて来る
男の人を無視。
あたしは学校へと歩いた。