君と、恋
一瞬、静まり返った教室内。
一気に向けられた、
痛いくらいの視線。
「…紗月、呼ばれたよ?」
「みたい、だね…はは」
笑うしかない。
こんなこと、
予想もしていなかったんだから。
「行って…来る」
速水に怒りを向ける。
これで友達消えたら、
一生恨んでやる。
なんて思いながら。
英語科準備室に向かう。
「何でここだけこんなに遠いの…」
英語科準備室は、
普通に棟とは違う場所にあって。
教室からは死角になる場所に位置する。
「泉川です。」
ドアをコンコンと叩き、
名前を告げる。
すると、中から慌てた男の声。
「…え、ちょ…っ」
失礼します、と。
賢い生徒を演じて中に入る。
静まり返る室内。
目の前には、
思いもよらぬ姿があった。
「あの…、」
速水という人間じゃ
ないのかとも思ったぐらい。