君と、恋
「紗月ちゃん、いきなりごめんね」
さっきの電話は哲さんからだった。
「全然大丈夫です」
窓側の席に座る哲さんに夕日が当たって、
いつもよりももっと輝いて見えた。
「紗月ちゃん、どうしたの?」
あたしは哲さんの近くに腰を下ろした。
不思議と温かくて、すごく落ち着いた。
「泣きそうだね」
「あ、いや…」
あたしは笑って見せた。
哲さんはあたしを手招きした。
目の前に座ると、哲さんは
あたしの目を見てゆっくり話し始めた。
「何あったか、話して?」
優しい目に騙されてるのか、
あたしはさっきあった出来事を話した。
「よく我慢したね。泣かなかったんでしょ?」
あたしは黙って頷いた。
「紗月ちゃんはその男が好き?」
「…好き?」
あたしは黙った。
十夜はもう他の女の子のもの。
そもそもあたしのことはただの幼なじみ。
あたしが勝手に十夜を好きだっただけ。
「いないと寂しいけど、幼なじみだからで。」
あたしは哲さんの目をじっと見つめた。
「今いないと困るのは、哲さん…です」
あたしは今、最低なことをした。
取り消すことなんて出来ない。
都合いい頭だってことは承知の上。
哲さんを十夜と重ね合わせて。
関係ないのに巻き込んで。