君と、恋
「よく出来ました。」
「わっ…」
哲さんはあたしの手を強く
自分の方へ引っ張った。
「ずっと待ってたよ」
いつの間にか、あたしは
哲さんの胸の中にいた。
「会った頃からずっと、好きだった」
あたしは自分の耳を疑った。
「え、本当ですか?」
「うん。ずっと俺の片想い」
そう言うと、もっと強く抱きしめられた。
「紗月ちゃん?」
「はい」
哲さんはあたしの自分から遠ざけて、
真っ直ぐに目を見ていた。
「絶対幸せにするから。」
真剣な目を逸らすことは出来なかった。
「俺と付き合って下さい」
そう言われた瞬間、あたしの頬を
一筋の涙が流れた。
こんな最低なことをしてるあたしに、
想いを寄せてくれるなんて。
「あたしでよければ…」
絶対いけないってことは分かってるのに。
いつからあたしは、
こんな人間になったんだろう。
「絶対離さないからね」
哲さんはそう言って、あたしを
強く抱きしめた。
「ずっと好きだった」
「嬉しいです」
もう何も考えられなくなっていた。
「帰ろう、送るよ」
そう言って差し伸べてきた手に、
あたしはゆっくりと自分の手を重ねた。