君と、恋
いつもと同じ道なのに。
今日は何だか新鮮に感じた。
「あ、ここでいいです」
あたしは家の近くの公園で、
哲さんの手を離した。
「離したくないな」
ぽろっとこぼれた言葉に、
あたしは驚いて顔を見上げた。
「え、」
「嘘だよ。ごめんね」
哲さんはそう言うと、
あたしの頭をポンポンと撫でた。
その優しい愛撫にあたしは
申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
「また明日ね」
少し微笑んだ哲さんに、
あたしは微笑み返した。
遠くなる背中を見つめながら、
あたしは今日あった出来事を
頭の中で整理した。
もうあたしは哲さんの彼女。
十夜はあたしの幼なじみ。
…十夜を想うことは、もういけないこと。
遠くを見つめながらそんなことを
考えていると、後ろから足音が聞こえた。
「紗月」
足音が止まったかと思うと、
いきなり肩を叩かれた。
「えっ…」
驚きながら後ろを振り向くと、
そこには十夜が立っていた。
「何してんの、こんな所で」
十夜は、いつもと変わらない
冷たい態度だった。