君と、恋
「べ、別に」
明らかに動揺してるあたしの態度。
「…あっそ」
十夜はそう言いながらも
あたしの目の前から動こうとしない。
「何?」
あたしは帰りたい一心で
十夜に質問を投げかけた。
「今日はごめん」
目を逸らしてしまった。
一瞬の十夜の顔が、すごく泣いてる
ように見えた。
「別に謝んなくても…」
あたしはそう言いながら一歩後ろに下がった。
「俺さ、もしお前が…」
「何も言わないで。帰るね」
あたしは意味もなく、
十夜の言葉を遮って家の中に入った。
次に言われる言葉が
何か怖かった。
何も言われることなんて、
してないのに。
あたしは怖さから自分を守った。
ただの弱虫野郎なだけ。
家の中に入ると、
母親がもうご飯の準備をして
あたしの帰りを待っていた。
ご飯を食べ終え、お風呂に入り
自分の部屋に戻ると
携帯のランプが光っていた。
携帯を開くとディスプレイには
“メール受信1件”と出ていた。
それを見た瞬間、胸が飛び上がった。
“おやすみ”
哲さんからのたった4文字。
こんなにも優しい人と
付き合ってるんだから。
あたしはこの人を
ちゃんと好きになろうって、
そう思った。