君と、恋
いつも通りの朝が来た。
あたしは制服に着替えて、朝ご飯を食べた。
今日は少し早く出ようとした。
十夜に会いたくないから。
勝手に気まずいって
思ってるだけなんだけど。
やっぱり会いづらい。
「いってきます」
リビングにいる母親に声をかけ、
あたしは玄関に向かった。
「紗月、今日は早いのね」
「学校で勉強するから」
嘘も平気でつくようになった。
玄関のドアを静かに開けた。
いつもそこにいるはずの背中が、
今日は見えない。
あたしはドアを閉めると、
泥棒のようにゆっくりと階段を下りた。
「やっぱりな」
頭上から聞き慣れた声が聞こえた。
「え、」
「今日は早ぇな」
まさかの出来事だった。
「十夜、何してんの」
「お前のことだから、俺を避けるだろうと思って」
あたしのしている行動は、
十夜にはお見通しだった。
「彼女は?」
あたしは唐突に尋ねた。
すると十夜は顔色1つ変えず、
「知らね」
と答えた。
「朝はお前と行くから」
その言葉は、卑怯だと思った。
あたしはぐっと涙を堪えた。