君と、恋
「紗月、挨拶しなさい」
母親が外で遊んでたあたしを、
無理矢理家に連れて帰って
何を言うのかと思ったら
この一言。
目の前には知らない人達がいた。
高い身長に、短髪の男の人と、
綺麗に着飾っている女の人。
そして、あたしと同じくらいの男の子。
小さいながらに、あたしは
お辞儀をして挨拶をした。
「紗月ちゃん、仲良くしてあげてね」
にっこり微笑む女の人は、
すごく優しそうで綺麗だった。
後ろからひょっこり出てきた男の子は、
あたしに向かって少し頭を下げた。
「改めて、また来ます」
そう言って、3人は帰っていった。
「ねえねえ、ママ!」
「ん~?」
母親は台所で夕飯の仕度を始める所だった。
「あの子、お隣に来たの?」
「そうよ。十夜くんだって」
「とおや…くん?」
「紗月はいい子だから、仲良くしなさいね!」
「紗月、いい子だから仲良くする!」
あたしの家の周りには、
同じ年齢の子が少なく
あたし自身にも友達が
少なかった。
とはいえ、いないわけでもない。
だけど何故か、越してきた男の子を
ほっとくことが出来なかった。