君と、恋
学校に着くと、
校門の前には哲さんがいた。
あたしの姿を見つけたのか、
哲さんはこっちに向かって歩いてくる。
「十夜、またね」
十夜に知られる前に、
そう言って離れようとした。
…なのにも関わらず、
十夜はあたしのことを引きとめた。
「今日も先帰ってて」
たった一言が、
あたしの胸をえぐった。
「紗月ちゃん!」
目の前に来た哲さんが、
あたしの名前を呼んだ。
「あ、おはようございます」
哲さんはあたしから
十夜に視線を移した。
「紗月、誰だよ」
背中の方で十夜の声が聞こえた。
「あ、この人は…」
「紗月ちゃんの彼氏です。よろしくね」
そう言って、哲さんは呑気に
手を差し出した。
十夜は、案の定その手を軽く避けた。
「じゃ、紗月またな」
そう言って小さくなる十夜の背中。
あたしはその背中をじっと見つめた。