君と、恋
「紗月、おっはよ!」
朝から元気な結衣が、
教室であたしを待ち構えていた。
「おはよ~!」
「あ、そうだ」
結衣は何かを思い出したかのように、
あたしの制服の裾を引っ張った。
「ね、これ見て!」
そう言って鞄から取り出した1枚の写真。
「何それ…」
その写真には、大きくて綺麗な家と
青々とした海が広がっていた。
「あたしん家の別荘!」
結衣は嬉しそうにあたしの顔の
前にちらつかせた。
そしてこの一言。
「行かない?」
飛び跳ねながら言う結衣。
まるで子どもが母親におねだりを
するような感じだった。
「え、いいけど…2人?」
もちろん予想は出来ていた。
「あたしと紗月でしょ!」
結衣は指を折りながら、
名前を読み上げた。
「んで、龍司さんと哲さん!」
…予想していた展開だけど。
正直困った。
まだちょっと、抵抗があるあたし。
「本気?」
あたしは結衣の意思を尋ねた。
「後、十夜くんと彼女も!」
「いや、十夜はちょっと…」
本当は十夜が好きだということは、
結衣は知らない。
「え~、いいでしょ?せっかくだし!」
子どものような目に、
あたしは逆らえなかった。
「はい…分かりました。」