君と、恋
生きるなかで、何か1つだけ
避けれるのであれば。
…これだけは避けたかった。
階段を下りて、玄関へと続く
長い階段を歩いてるあたしの目の前に
2つの影が見えた。
まだ人が残ってたんだ、としか
考えていなかったあたし。
はっきり見えてなかった影が、
だんだん分かってきた時。
あたしは崩れそうになった。
心の中で何かが音を立てて割れた。
1つの影は可愛らしい女の子で、
もう1つの影は、十夜だった。
あぁ、この子がこの間見た
彼女か…なんて。
あたしは心のどこかで
そんなことを考えている
余裕があったらしい。
隣を通り過ぎる瞬間、
まるでお互い知らない人のような
そんな顔をしている自分がいた。
十夜の顔を見ないように、
彼女の顔も見ないように。
自分なりに必死だった。
あたしは靴を履き替えると、
数段ある階段に腰を下ろした。
「歩けなかった」と言った方が
正しいのかもしれない。