君と、恋
「後で行く」
どこか儚げな目をした十夜に、
あたしは首を振った。
「今日は、だめ。ごめんね」
家に来る意味が分からない。
必要がないのに。
あたしは、最低限のことだけしか
言えなかったけど。
今日だけは、もう会いたくなかった。
哲が好き…って思いで
1日を終えたかったから。
「十夜くん?」
もう1度向けた背中から、
可愛らしい声が聞こえた。
きっと彼女の声。
「あ、ごめん」
謝る十夜を背中で感じながら、
あたしは哲と校門を出た。