君と、恋
「紗月、1時間目…」
結衣ばかりを見ていて、
視界に入っていなかった哲が
あたしを後ろから優しく包んだ。
「サボろっか…」
耳元で囁かれ、
あたしは黙って頷いた。
周りからの視線が痛い。
…と、いうよりも、批判する声が
たくさん聞こえた。
「じゃ、俺ら行くから」
哲は龍司さん達に声をかけ、
あたしの手を引いて校舎へ向かった。
「屋上にいるね」
あたしは結衣にそう伝え、
哲に引かれるがまま後を着いて行った。
屋上のドアを開けると、
そこには綺麗に風景が広がっていた。
「うわ、すごーい!」
「来たの、初めて?」
「うん。あたし、まじめだから」
冗談を言いながら、
あたしはドアの1番遠い所まで
黙って歩いた。
その後ろを哲もゆっくり歩く。
少しだけ吹いている風が、
とても気持ちよかった。
「紗月、ここおいで」
行き止まりになった時、
急に足音が聞こえなくなった。
「早く」
後ろを振り返ると、
哲は壁にもたれて座っていた。