君と、恋
あたしは、急いで
哲の所に足を動かした。
ポンポンと地面を叩かれた場所に、
あたしは腰を下ろした。
「旅行、楽しみだな」
「早く行きたいね」
他愛もない会話を、
繰り返していた。
だけど、苦にならなくて。
ずっと笑いが止まらなかった。
「こんな日が続くといいのにな」
ぼそっと呟いた哲を、
あたしはじっと見つめた。
何て愛しいことを言うんだろうと、
ある意味不思議に思った。
「幸せだな」
今度はあたしを見て、
はっきりと言った。
何とも言えない顔を見て、
あたしは目を逸らせなかった。
「哲のおかげだね」
いつの間にか、
本音がこぼれていた。
それを聞いた哲は、
あたしの手の上に
自分の手を乗せた。
それを見て、あたしは
哲の手を条件反射のように
握り返した。
「な、紗月」
甘く、優しい声が
あたしをくすぐらせた。
「キス、していい?」
いきなりの言葉に、
あたしの思考が少し止まった。
哲はあたしの顔をじっと
見たまま目を離さない。
あたしは、だんだん
顔が赤くなっていった。