君と、恋
「どうして、そんな悲しげなの?」
「えっ…、」
驚いた表情を見せる飛鳥ちゃんは、
手に持っていた水着を床に落とした。
「話、聞いてもらえ…ますか?」
こんなことしてる場合じゃない。
早く哲のとこに行かないと。
哲が待ってるのに…。
それよりも心が、
身体が話を聞きたいって。
聞かなきゃ、って言ってるの。
「ずっと好きだった十夜くんに告白したのは、3回目なんです」
3回も想いを伝えたこの子が、
急にすごく強く見えた。
「やっと想いが叶って。…って言っても、付き合ってくれてるんですけど。でも、やっぱりまだ両想いじゃないから…」
今にも泣きだしそうなこの子を、
あたしは疎ましい目で見ることしか
出来ずにいた。
「いつも素気なくて、何を言っても冷たいし。言葉数も少なくて…」
その時、あたしの中が
暴れだした気がした。
分かってないからだよ。
冷たいのも素気ないのも、
全部全部十夜の優しさなの。
それが十夜なの…
何で、分かんないかなぁ…