君と、恋
「ったく、俺の女は泣き虫だね」
哲はそう笑って言うと、
強く手を引いて座らせた。
別に泣いた理由を聞いてくる
わけでもなく。
静かにあたしの隣で、
寝息を立てていた。
寝顔を見ながら、
あたしは少し安心した。
「紗月~!ボール、ちょうだい!」
1人、哲の寝顔を見ていると
海の方から結衣の声が聞こえた。
言われた通り、ボールを捜すと
哲が寝ながら抱えていた。
「ちょっと待って?」
あたしはそう伝えると、
気持ち良さそうに眠る哲の
手を取って、ボールを
取り上げようとする。
「哲、ごめんね…」
起こさないように、と。
あたしなりに真剣に動かした。
つもりだったけど。
動かしたせいで、ボールは
哲の向こう側に行ってしまい。
「何、紗月…どうした?」
それを取ろうとして、
あたしは。