君と、恋
水が押し寄せてくる波打ち際。
あたしは履いていたサンダルを
そろえて脱いだ。
「哲…、あの、これ…」
「脱いでいいよ。おいで?」
手招きされ、熱い砂浜の上を
のそのそと歩く。
周りには、きゃっきゃと
はしゃいでいるギャルや、
どの女が可愛いか、と
見定めている男達で
溢れかえっていた。
「本当…紗月といると狂う」
…いたって普通ですけど。
そう思いながら見つめると、
少し照れたのか、顔を真っ赤にして
目線をあたしから逸らした。
「ん…可愛いよ」
まじまじと見つめ、
褒めてくれた哲。
自然と嬉しくて、頬が緩む。
「あ、ありが…と、」
「紗月、泳げる?」
「え、っと…実は…」
そう、あたしは
誰もが認める金槌だ。
「んじゃ、はい」
目の前には大きな手。
見上げれば眩しい笑顔。
「…はい?」
「お手をどうぞ?」
同時に白くて綺麗な歯が
顔を覗かせた。