君と、恋
動作が手を貸して、と
言っている。
泳げない、と言っている
あたしを海の奥へ
連れていくつもりだろうか。
「待って…あたし、本当に…」
「大丈夫。俺が、」
言葉を待つ刹那。
哲はあたしの手をぎゅっと握って。
「絶対守ってやるから」
だから安心して。
と付け足して。
あたしの頭をくしゃくしゃと
撫でてくれた。
「…ん、」
不意を突かれ。
完全に安心している自分がいた。
いっそこのまま、
哲に溺れてしまえば
いいのに。
他のことなんか考えないで。
哲のことだけを、
哲との時間だけを、
考えられればいいのに。
そう思わずには
いられない。