君と、恋
「ゆっくりでいいからね」
夏にしては少し冷たい水温。
照らされる太陽とマッチして、
丁度いい温度だ。
ちゃぷん、ちゃぷんと
海は気持ち良さそうな音を立てる。
「紗月、大丈夫?」
「大丈夫、大丈夫」
不思議と怖くない。
溺れる心配も、水への恐怖心も、
怖いくらいにない。
「…あれ、飛鳥ちゃん?」
「あ、本当だ」
海の中から砂浜を見渡す。
たまたま目に入ったのは、
震えながら抵抗する女の子と、
遊ぼうよと誘っているであろう
下心見え見えな男共。
「紗月、ちゃんとつかまってて」
「あ、はい」
状況を把握するのに必死で、
手を離しそうになっていた。
哲はあたしの手を握り、
腰にさっきより強く腕を回すと
砂浜に向かって少し早いスピードで
泳いだ。