君と、恋
そう言うと、飛鳥ちゃんは
ふふ、と微笑んだ。
「十夜くん、ちょっと待ってて、って」
「…は?何、それ…」
ちょっと待ってて、って…
女の子1人を、ここで待たせて。
自分はどこにいるの…?
「飛鳥ちゃん、大丈夫?」
会話の途切れ目を見てか、
哲がひょこっと隣から顔を出した。
心配そうに見つめる哲の視線は
痛いくらいに優しいものだ。
「すいません。ご迷惑をおかけして…」
丁寧に頭を下げる飛鳥ちゃんが、
何か可哀想で仕方ない。
こんな思いをさせる…
十夜が許せない。
「紗月…あれ、十夜くん?」
哲が指をさす方向に
十夜の姿があった。
手には1本の飲み物。
「十…っ」
「十夜くんっ…」
帰ってきたら。
真っ先に怒鳴ってやろう、って。
そう思ってたのに。
「俺…、一応説明してくるな」
「あ、うん。お願い」
あたしの声より。
あたしの顔より。