君と、恋
「…!…き!」
「…ん、んっ…」
遠くの方で結衣の声が聞こえて。
いつの間にか眠っていたようで。
あたしが重たい体を起こすと、
同時に腹部が痛みを増した。
目の前には、結衣が心配そうに
あたしのことを見つめている。
「ここ…どこ?」
周りは真っ暗で、
光といえば上の方にある
窓から差し込んでいるものだけ。
「分かんない。…工場、みたいだね」
言われてみれば。
壁は鉄っぽいもので覆われているし。
地面もひんやり冷たい。
「てゆうか、何この状況…」
「あたし達、拉致られた…ってこと?」
どう見ても、
気を失って気がつけば知らない場所。
さらわれた、って思うのが
…妥当だよね。
「連絡。…そうだ、連絡しないと」
そう思って携帯を開いた時。
「お目覚めだね、お2人さん」
男の人の声が、
静かに響いて聞こえてきた。