君と、恋
「紗月ぃ…っ、」
「ちょっと、離しなさいよ!どい、てっ…」
精一杯の力で男を振り払うが、
一向にどく気配がない。
それどころか。
「君はこっちだよ」
軽々と持ち上げられ、
どこかへ連れて行かれる。
さっきよりも真っ暗な。
灯りすらない場所に。
「い…いやぁ…、」
「可愛いね。上坂が惚れる理由…分かるなぁ」
全く顔も見えない。
どんなやつかも分からない。
分かるのは、荒い息遣いと。
大きい体だけ。
「あ、あなたは…哲の何なんですかっ」
これ以上出ないくらいの声を張り上げる。
男は、後ずさるあたしとの距離を
ゆっくりつめながら。
「腐れ縁、てやつだよ」
そう答えた。