君と、恋
その日の夜。
十夜の家を訪ねると、
お母さんに
"十夜なら、多分公園に行ったわよ"
と言われ、公園に向かった。
街灯の下にあるベンチに
人影が見えて、
声をかけるとゆっくり
振り向く十夜がいた。
「紗月か。誰かと思った」
そう言いながら十夜は、
ベンチの片隅に寄って
場所を空けてくれた。
「あ、これ…」
「何これ」
手に持っていた紙袋を手渡す。
中に入っているのは。
「クッキーか。お前いつまで経っても少女趣味だな」
そんな毒を吐くくせに。
十夜はあたしが焼いた
クッキーしか食べない。
「今日のお礼…にしては、安いものだけど」
そう言うと、ふっと笑って
あたしを見た。
あたしは当然顔が見れなくて、
下を向いたまま。
「安くていいんだよ。ありがとな」
やけに素直な十夜が。
すごく愛おしくてたまんない。