彼と私と隣の彼



途方にくれ、廊下にしゃがみ込むあたし。


「もうヤダー…」


静かな廊下にはあたしの消えそうな声だけが響く。


体育座りをしてうずくまるあたし。


このまま座ってたら誰か来るかなあ…



「どうかしたの?」


ふと頭上から優しげな声がふってきた。


顔をあげようとした時感じたのは、デジャヴュ?


いつかの光景。

前にも一度こんなこと…。



まさか…



「先輩…。」



やっぱり…。



信じられない…。



「具合悪いの?」



ありえない。

こんな展開。


水原先輩がここにいるなんて…


入学式とまったく同じ展開だなんて…どうして?



高鳴る鼓動に熱くなる全身。




「どうして…」


「え?」




こんなこと…

こんな展開…今度こそ運命なんじゃないかって錯覚してしまいそうだよ。



「あれ…君、入学式で…もしかしてまた迷子?」


なんてクスクス笑う先輩。



「覚えててくれたんですか?」


「当たり前だよ。あんな出来事初めてだったしね?」


そう言って優しく微笑んだ先輩に本気で泣きそうになった。



誰だっけ?って言われるのが怖くて近づけなかった1年間。


それをなんなく裏切ってくれるなんて…

こんなこと…思ったこともなかったよ。



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