彼と私と隣の彼



「間違って第三校舎に来ちゃったみたいだね。」


やっぱりここは第三校舎なんだ。

あたしってば本当ダメだなあ。



「ここの道まっすぐ行けば第二校舎だから。」


あたしの背中にある一本の道を指さしながら


「今度は遅れないようにね。」


って優しく笑って言った。


あたし…この笑顔が好きなんだ…



「…ありがとうございます。」



言いたいことはたくさんあるの。


メールアドレスだって聞きたいし、何でも良いから接点が欲しくて…


それなのにあたしの口は動かない。



この状況にまだ戸惑っているの?


それとも、勇気がないだけ?



それすらわからない。


でもただ、ただ先輩にこうして会えた。


それだけでよかったのかもしれない。



違う…


あたしはただ、もう一度先輩に会いたかっただけなのかもしれない。


先輩の笑顔が見たかっただけなのかもしれない。




でもやっぱり…



自分の気持ちがますますわからなくなってしまった。


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