彼と私と隣の彼



後から知った話だと、その水原先輩って言うのは、2年生でしかも生徒会長らしく。


だから先生もあんなにあっさりしていたのだと納得した。



それ以来、この馬鹿でかい学校のせいか、水原先輩が忙しい生徒会長ということもあってか、1年以上たった今でも遠くから見かけることはあっても、先輩と話す機会はまるでなかった。










「と、まぁこんな感じかな。」



「ふーん。」


入学式に一目ぼれ。


漫画みたいな展開に驚いているのは正直誰でもないこのあたし。



でも運命みたいな出会いでしょ?




「でも会えさえしないんだろ?」



「んー…」



「じゃあ俺で良いじゃん?」




さっきからあたしと話すこの男は、東原春人。


2年生になってから同じクラスになった隣の席のいわゆるクラスメイト。




「俺優しいよ?大事にするし。」




こいつがもうータラシでチャラくて、本当に参ってます。


女の子はみんな好き♪タイプの春人に言われたってちっとも嬉しくないもん。



「バカ言わないでよ。」


毎日毎日飽きもせずにこうやって、口を開くのはきっとそれが春人の挨拶みたいなものなんだろう。




「詩乃ちゃーん…。」


「そんな可愛い声出してもヤダ。あたしまじめな人が好きなの。」



チャラ男だけあって、顔は相当かっこいい。


先輩とは違って、人工的につくられた髪色もおしゃれにセットされているし、耳にはいくつかの穴も開いていたり。


隣の席じゃなかったら絶対かかわってないな。


ってよく思うんだ。


< 3 / 44 >

この作品をシェア

pagetop