四月馬鹿、偽りのプロポーズ。【BL】
ソファーからじいっと、リビングから玄関へと繋がる廊下の扉を見つめる。
声がだんだん大きくなっていく。
こっちに近付いて来ている証拠だ。
そして、扉が開かれた。
そこにいたのは案の定──
「有貴さんっ!」
大好きな大好きな、僕の愛しい人。
兄ちゃんの友達の、有貴(ユキ)さん。
「翔くん、久しぶり。最近会わなかったよね。元気だった?」
有貴さんに抱き着く僕の頭を、優しく撫でてくれている。
大きな手が、とっても温かくて。
時折有貴さんの細くて長い指が、僕の髪に絡まってくすぐったい。
「僕は元気ですよっ」
「今日の翔くんは、いつもより積極的で嬉しいなー」
「僕も有貴さんに会えて嬉しいです」
顔を上げて有貴さんを見ると、僕の大好きな笑顔でふわりと笑ってくれた。
ドキン、と心臓が跳ねた。
やっぱり僕、有貴さんが好きだー……
──どうしよう。
僕、有貴さんとしか結婚したくないかも。