ありえないヒトメボレ
出会い
 学校が終わって、帰り道私はちょっと寄り道をした。お気に入りのドーナツ屋さん。ホワイトチョコのかかったやつがお気に入り。

夕方なのにやけに人が多い。
あ、そうか。
今日は近くでアイドルグループのツアーコンサートがあるって言ってた。
こんな田舎までくるなんて。芸能人って凄いって思う。

ドーナツ屋は人でごった返してきた。



「ここ、空いてる?」
ギターを持ってサングラスをかけた男が私に聞いた。ホワイトチョコが一番のっかっているところを口に入れたばっかりだったので、声が出せない。首だけで頷く。
「座っていい?」
もう一度首で返事。男はよいしょと私の前に座った。サングラスを外す。


おや、いい男。


背はかなり高い。180くらいあるかもしれない。少し猫目。口が大きいけど品のいい顔立ちをしている。あ、

私と同じホワイトチョコスペシャルコーティングドーナツ持ってる。
可愛い好みじゃないか。

「芸能人のくせに。」


「え?俺の事知ってる?」


当たり前だ。私だって今を華と咲き誇る女子大生。
今をときめくアイドルグループのギタリストくらい知っている。

「もうコンサート始まるんじゃないですか?『蘇我 奏汰』さん。」
一応周りを気遣って小声で言った。
「いや、今日はもう終わったから。それより驚かないんだね。」
「めちゃめちゃ驚いてますけど。」
そう。めちゃめちゃ驚いている。でも、ここできゃ(^-^)なんて言うような可愛い事は性格上言えない。

サングラスを外したので、周りの客も奴(失礼)に気が付いた。


「あの、カナ、ファンです。」
半泣きの女の子達が席に群がってきた。
「ありがとう。」
そう言いながら、握手に応えている。

そういえば、この人はファンサービスがいいって雑誌に書いてあったな。
口が大きいので笑った顔がすごく可愛く見える。

私の好みではないが。

っていうか、私、ここにいたら邪魔だな。


よし、出よう。で、明日学校で芸能人にあったと自慢しよう。
決定。
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