凛と咲く、徒花 ━幕末奇譚━
「っ、たぁ」
突然、額に感じた衝撃で歩みを止めた。
あれこれ考えていたせいでちゃんと目の前を見てなくて、突き当たりの壁にぶつかってしまった。
なんで私ってこうもダメなのよ……。
自分自身に嫌気が差してくる。額をさすっていたら、もう一つ大事なことに気づく。
「…………私の部屋、どこ?」
さっきまでいた部屋を出てから適当に歩いてきたせいで、自分が今どこにいるのかすらもよく把握できてない。自室から出歩くときは、連行されている途中がほとんどで、必ず誰かが一緒だったから。
しかし今は誰もいない。あれっ。これって結構やばいんじゃないの。
…………どうしよ!そうよ、やばいよこれは!!本当にどうしよう、この年で、私、迷子?!
ある意味絶望的な状況に陥った。
誰かに聞けばいいんだけど、見知らぬ顔だから不審者扱いされる可能性は十分にある。現代ではふつうにできることもここではこんなに困難だなんて。
誰にも見つからないように帰らなきゃ…!でも、今は朝だから廊下歩いてたら絶対誰かに会うだろうし、やっぱりそんなこと無理なんじゃ……どっかに屯所内の地図とか貼ってないの?
軽く混乱状態の私は馬鹿な考えだと思いながらも、きょろきょろと地図らしき物を探す。
「―――おい、そこのお前」
案の定、背後から聞いたことのない声がした。