凛と咲く、徒花 ━幕末奇譚━
「お前……見ない顔だなー。新入りか?」
青年は私をまじまじと見つめる。
なんて言うべきだろう。私のことは朝礼で伝えるとか言ってたし、一応知ってはいるはず、よね?
「あ、あの、えっと」
「つっても、なーんか細いし力無さそうだし女みたいな顔してっし、見るからに弱そうだな、お前!大丈夫かよ」
「……。」
し、失礼だこの人。
運動は苦手だから合ってるけどさ、その通りだけどさあ…。そんな次から次へと言わなくても…!!
「深夜にやるあの襲撃の試験を通過できるような器には全然見えねーんだけど、」
「へぇー、意外な組み合わせだね」
尤もな指摘に言葉を詰まらせていると、向かいから馴染みのある声がした。
「お、総司じゃん」
「沖田さん!」
二人揃ってほぼ同時に言った後、私たちは互いに顔を見合わせた。
〝なんでお前が総司を知ってるんだ?〟青年の顔にはくっきりとこう書かれている。
「総司、こいつ知ってんの?」
青年が私の顔を指した。指がむにっと頬を突く。
「知ってるも何も、今朝、山南さんからちゃんと話あったでしょ。聞いてなかったの?」
「えー。新入りの話なんかあったっけな…そういや、あったのかも」
呆れたように言う沖田さんに青年はあやふやなことを口にする。
そういえば、この人。私を男だと思い込んでる。きっと、だからわからないんだ。