凛と咲く、徒花 ━幕末奇譚━



「朔だよ、その子が」

「は?」

「ほら、私たちで保護することになった」

「え、え、え?」



彼が説明すると青年の目が点になる。

頬を突いていた指がすとんと落ちて、青年は瞬きもしないで少しの間私を見つめ、




「うわああああああああああっ!!!」




盛大に叫びながら私から勢いよく離れた。

な、なんなんだ一体?今度は私がぽかんとしてしまう。視界の端で彼がにやっと笑んだ。



「やだなー気づかなかったの?平助。失礼なやつだなあ」


平助?じゃあこの人、藤堂平助?!

授業で聞いた名前。藤堂さんを凝視すると、その顔がどんどん赤く染まってゆく。



「ち、ちがうんだ、誤解すんなよ!さっき首に腕回したのには別に深い意味なんてねぇから!ほんとにこれっぽっちもねぇからな!!」


茹蛸のように真っ赤な顔で弁解するように必死で話す。




「つーか!黙ってたお前にだって非はあるぞ!!」


びしっ!という擬音が聞こえてきそうな素早さと力強さで藤堂さんが私を指差した。



「私は女ですって、さっさと言えよな!」

「お、女です」

「今更言っても遅ぇよ!!」


どうしてこんなに怒ってるんだろう。この人も怖い人?



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