凛と咲く、徒花 ━幕末奇譚━




「あははっ、いい組み合わせだね、君たち」

「総司!お前他人事だからって笑い過ぎだろ?!」

「ごめんごめん。朔も許してやってよ。平助はあまり女慣れしてなくて、照れ屋な可愛いとこがあるから」



彼のその発言で、怖い人なのかもと思っていた藤堂さんの印象ががらっと変わる。

いきなり怒鳴りだしたのは、照れ隠しだったのか。確かに、可愛い人。



「おいっ、可愛いって俺は男だぞ?」

「でも平助?この前左之さんたちが買ってきた春画本渡されたとき、気を失いかけてなかった?」

「っな、うるせーよッ!!!」

「……しゅんがぼん?」



聞き慣れない単語に反応する私へ二人は、ばっと振り向く。

藤堂さんは顔を凍らせていて、彼は実に愉しそうに瞳を歪めていて。



「朔、もしかして知らないの?」


素直に頷く。


「そっか。あのね、耳貸して?春画本っていうのは―――」

「っ、ダメだダメだ!絶っ対にダメだー!!」

「わ!!」


手招きする彼に近寄ろうとした私を藤堂さんは慌てて引き離す。



「何教えようとしてんだよ総司!お前も何聞き返してんだよ!」


キッと藤堂さんは私を睨むけれど、真っ赤な頬がそれを打ち消していて全然怖くない。そんな藤堂さんの姿を見て、彼は満面の笑みを浮かべている。

嗚呼、本当に人間で遊ぶのが好きな人だ……。






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