凛と咲く、徒花 ━幕末奇譚━
悪趣味だなあ。
そう思うと同時に、うれしくなる。
「ごめんごめん、平助」
「お前のごめんは信じらんねぇよ…!」
新たな一面というか、こうやって仲間同士でふざけあっている彼の姿を知れたことがうれしいの。ほっとする。ただ時代がちがうだけ。彼だって、ふつうの男の子なんだもんね。この姿だけを見ていたら、彼らが人を斬っているなんて信じられない。
「もういい!俺は行く!」
頬の赤みがまだ引いていないのに、藤堂さんはずかずか歩いていく。ここにいれば、彼の玩具になってしまうからだろう。
その背を見つめていたら、藤堂さんが急にこっちを振り返った。必然的に合う、目。
「えっとー朔、だっけ?」
「は、はいっ」
「もうわかってっと思うけど、俺は藤堂平助。よろしくな」
びっくりだ。
まさか、これを言うためにわざわざ立ち止まってくれただなんて。
この人たちは、温かい。昔の方が人の心は豊かだったと、テレビかなんかでそう聞いたことがあるよ。それを深く納得できる。時代が時代だから、明日にはあるかどうかもない命だから。人との繋がりを大切に思えるのでしょう。
「あっ私こそ、よろしくお願いします」
「おう。左之さんたちもお前に興味持ってたし、また会わせてやるよ」
藤堂さんは少年のように笑う。
「ありがとう」
その言葉がうれしくて、つい私まで、ぱあっと笑顔になる。
途端に藤堂さんはまた頬を赤く染める。