凛と咲く、徒花 ━幕末奇譚━
「あれー?平助、また照れてんの?」
「そんなんじゃねぇし!」
見逃さなかった沖田さんが突っ込むと、藤堂さんは逃げるように今度こそいなくなってしまった。うん、やっぱり可愛い人だ。
「あー本当に面白いなあ、平助は」
彼が独り言のように呟く。……うん、やっぱり悪趣味だ。
「それにしても、」
すっ、と自然な動作で彼は私の顔の横の髪を掬う。微かに頬に触れた指先。その突然の行動に、心臓が大きな音を立てた。
さっきまでの藤堂さんみたいに頬がじんと熱くなる。
「この短い髪のせいなんだろうけど、みんな君を男と間違えるね。どう見ても女なのに」
見上げた瞳は柔らかい。
惹きつけられ、吸い込まれそう。
目を離せなくなるんじゃないかと思ったとき、それが意地悪く細められた。
「男ばっかだし大丈夫かなと思ったけど、その容姿だと襲われる心配はないかもね。いっそ、髷でも結えば?それはそれで愉しくなりそうだから―――僕が」
……ときめいていた僅か数秒前の私を返せ。
やっぱり、悪趣味。