凛と咲く、徒花 ━幕末奇譚━
日々が過ぎるのは早いもので、ここへ来て一ヶ月半が経とうとしていた。
初めのうちはまた刺客が来るんじゃないかという、心にこびり付いた不安を拭えずにいたけれど、実際は驚くほど何にも起きなくて。
しのちゃんたちに色々教わりながら、この時代での生活にも段々慣れ始めてきている。
毎日が嘘みたいに穏やかというか平凡というか、ハッキリいえばやることがなくて暇というか……。
「朔ー!いるか?」
あっ、そうそう。
平凡な日々の中で確かに変わったこともあった。
「はーい、いますよ!」
私を呼ぶ平助くんの声に元気よく返事をすると、戸が開いた。
「よぉ!邪魔するぜ」
左之さんがニカッと笑う。
「さっき甘味処行ってきたんだ。ほらこれはお前への差し入れ!」
そう言って団子を差し出すのは新八さん。
そう、平助くんの紹介であの原田左之助と永倉新八と仲良く?なることができたのだ。