凛と咲く、徒花 ━幕末奇譚━
「うわあ…、有難うございます!」
「いいっていいって、さぁ食いな!」
三人は定期的に私の部屋を訪れては色んな話を聞かせてくれたり、こうやって和菓子を差し入れしてくれたりする。
保護という名目で軟禁状態になっている私を気遣ってくれてのことだろう。
それが私にはとても嬉しかった。
「しっかしまー、お前も気の毒なもんだぜ」
嬉々としてお団子に手をつける私を見て、新八さんはしみじみと言う。
「? そうですかね?」
「そうですかって…。だってあれだろ?朔はどっかの良家の姫様ってわけでもねぇのに、ほぼ一日中この部屋に囲われてんだぜ?」
「だな。一月もこんなとこにいやあ、体が鈍(ナマ)っちまう」
平助くんと左之さんも神妙な顔つきになり、うんうんと頷いた。
「稽古できねぇなら、俺は切腹した方がマシだな」
「とか言って、どーせ左之さんはまた死に損ねるんだろ?」
「おっ言いやがったな、平助このやろ」
「ぐぁ、息、死ぬっ」
「おい止めろってお前ら」
茶化した平助くんの首を逞しい二の腕で背後から締める左之さん。
そんな二人を呆れたように新八さんは見守っていて。
この三人が集えばいつもこの流れになっている気がする。